アクセス解析とWeb解析による分析対象の違い
アクセス解析とWeb解析は、多くのサイトでは一括りに説明されることが多い言葉です。一括りに説明される場合は、Google Analyticsなどを用いたアクセス解析の意味合いで説明されていることが多いようですが、本稿ではもう少し広義の意味で両者を区別して説明していきたいと思います。
Contents
アクセス解析とWeb解析の概念的な違い
アクセス解析とは
まずWeb解析は「全体」に重きを置いた言葉で、アクセス解析は「部分」に重きを置いた言葉だと理解して下さい。どういうことかと言いますと、アクセス解析はアクセス(流入)を解析します。アクセス(流入)とは、どういったユーザーが、どこからどう来て、サイト内でどういった行動を取り、その結果としてコンバージョン(目的達成)したのかどうかを分析するための手法です。Webサイトへのアクセス(流入)を通して得られる様々なデータをもとに、解析(対象となる事象を調べ、その構成要素を列挙し、それらの関係を明らかに)して対象の特性を知ることが、アクセス解析の内容です。
Web解析とは
それに対してWeb解析とは、あらゆるデータをWebを軸に整理統合し、目的を実現するための手段を明らかにしていく分析作業です。具体的にはSEO、リスティング、リターゲティング(リマーケティング)、コンテンツマーケティング、ソーシャルマーケティングなどのオンラインマーケティングはもちろん、新聞やTV等のマス広告、インタビュー、モニター、アンケート、営業などあらゆる施策結果をWebデータに集約されるように設計します。それらを解析することで、アクセス(流入)だけではなく、全体の目的を実現するための分析を可能とします。換言すると、アクセス解析はWeb解析の一部を構成するとも言い換えられます。
アクセス解析を通して理解できること
ユーザー
自社サイトに流入しているユーザー像を知ることができます。年齢、地域、デバイス、新規とリピーターの割合など細かくユーザー像を把握することができます。Googleのアカウントでログインしているユーザーのプロフィールのみを参考にしていますが、ユーザー像を知るには十分な情報です。自社にとって将来的に顧客としたいユーザーと、実際に訪問しているユーザーとのギャップを見ると、既存のマーケティング施策の有効性を議論することができます。特に参考になる項目に、「コホート分析」があります。特定のタイミングでサイトへ訪問したユーザーの、その後の行動の変化を見ることができます。何かしらのキャンペーンを打った前後の変化を見るにはとても有効な分析手法の1つです。
集客
ユーザーがどこから流入してきたかを知ることができます。自然検索からなのか、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアからなのか、あるいはGoogle AdWordsなどを使った有料広告なのか。一時的な流入増を知るには、この集客を使って流入経路を細分化することで把握することができます。Google Analyticsの考え方としては、結果(Analytics)を見て原因(Webサイト上での施策)を考えるのではなく、原因(Webサイト上での施策)を意図して作り出し、その結果をGoogle Analyticsで確認するような考え方が本質的です。
行動
ユーザーがどのページを最初に見たか、どのページから最終的に離脱したか等、ユーザーの行動について知ることができます。ユーザーが最初に訪問したページ(ランディングページ)で、上位にランクインしているページには他ページへの導線を付けましょう。あるいは、上位ページは多くのユーザーに読まれることになるので、コンテンツをリライトして更に魅力的なページにしましょう。また、離脱が多いページはその要因分析を行い、リライトやデザイン変更などで離脱率を下げる施策を打ちましょう。この入口と出口を管理及び改善していくことで、PVやセッションなどの数字を高めていくことができます。地道な作業ですが、非常に大切な作業です。
コンバージョン
設定した目標に対して、ユーザーがどの程度完了してくれたのかを知ることができます。結果としての数値だけではなく、プロセスについても知ることができます。コンバージョンは最初から自動的に設定されているものではなく、自らで何を持ってコンバージョンとするかを決める必要があります。コンバージョン目標が設定されていないアカウントはGoogle Analyticsの分析準備が出来ていないといっても過言ではないので、まずはコンバージョン設定をするところから始めましょう。尚、コンバージョンはお問い合わせフォームへのお申し込みだけではなく、例えばPDFのダウンロードなど様々な形で設定することができます。
Web解析に必要な分析手順
Web解析は上述のアクセス解析と違って戦略的な設計図が必要です。シナリオを設計し、それに沿ってKPIを立てて、そのKPIを実現するための手段を検討し、結果をWebデータに集約し、それを解析することで始めてWeb解析ができたと言えます。
シナリオ設計
ペルソナとカスタマージャーニーの設定がこの手順での肝となります。まずはターゲットとするユーザーがどのようなプロセスを辿ってコンバージョンをするのかを想定します。ペルソナについては、「マーケティング戦略の要!ペルソナの基本と設定方法」、カスタマージャーニーについては「カスタマージャーニーマップの作り方と手順のまとめ」でそれぞれ詳しく解説しているので合わせてご覧ください。このシナリオの設計はWeb解析の根幹を成す部分になるので、関係チーム全体を巻き込む形で徹底的に議論して詳細を詰めていって下さい。とにかく、全ての中心をユーザーに置いて、ユーザーの行動と気持ちを可視化していきましょう。
コミュニケーションと情報収集手段の設計
各プロセスにおいてどのような手段を用いてユーザーとコミュニケーションを図り、その情報を吸い上げていくかを具体的に決めます。カスタマージャーニーマップを作ることで、それぞれのタッチポイントにおけるユーザーの行動を詳しくイメージできたかと思います。それらは最終的にWebのデータに集約していく上で、どのようなツールを使ってデータを収集し、整理統合していくかを考えます。各種タッチポイント毎に収集されるデータの流れを、最終的なアウトプットにまで統合していく流れを具体的に決めていく作業です。
KPI設定
シナリオの達成度合いを測るために、それぞれのプロセスにおいて鍵となる目標を置きます。重要なのはそれらの目標が最終的なゴールを達成するための目標と連動していることです。極端な話、KPI目標を達成したにも関わらず、最終的なゴール目標(売上や利益)の達成には貢献しないようであれば、それはKPIの設定を間違えていることになります。また、KPIは設定して終わりにするのではなく、それを適宜振り替える必要があります。毎日、毎週、毎月と振り返りのタイミングはKPIによって異なりますが、PDCAを回していく上ではこの振り返りは必須です。
Webデータの解析
以上の一連のフローと実際のオペレーションを踏まえれば、定期的にデータが蓄積されていくことになります。これらの収集したデータをWeb上のデータとして整理整頓し、目的実現のために分析する作業がWeb解析です。その中には、当然アクセス解析も含まれます。しかし、Web解析はアクセス解析のように、流入したデータの一部を解析するという作業とは異なる意味合いになることは以上の説明の通りです。
おわりに
以上のようにアクセス解析とWeb解析は広義ではその内容が異なります。ただし、狭義では上述のようにGoogle Analyticsなどのアクセス解析の意味合いで説明されていることが多い言葉です。マーケターはこうした外来語と向き合う機会も多いですが、言葉の使われ方の違いに振り回されることなく、その本質を捉えてWebマーケティング業務に取り組んでいきましょう。