無料MAツール「Hubspot」がWebマーケティング分析で使えるか検証してみた
Webマーケティングを担当している方にとって、最近気になるものといえばMA(マーケティングオートメーション)ツールではないでしょうか?「MAを導入してみたいけど、コストが高くて…」という方も多いと思います。よく知られているMAツール になると、初期費費用の他ランニングで月額10万円ぐらいかかるのが普通なので、中小企業にとってハードルが高いですよね。
そこで最近「Hubspot」というMAツールが「無料版でもそれなりの機能が使える!」ということで注目を集めています。そこで「Hubspot」の無料版でどんなデータを収集・解析できるのか、どんな使い方ができるのかについてWebマーケティング目線でリサーチしてみました!
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Hubspotとは、世界で使われているインバウンドマーケティング向けのMAツールのこと
アメリカのHubspot社が開発・提供するマーケティングツールが「Hubspot」です。世界で数万社が利用していると言われています。
「Hubspot」は、基本的にインバウンドマーケティングをするために設計されています。インバウンドマーケティングとは、ご存知の方も多いと思いますが「顧客自身に自社サービスを見つけてもらい関心を高めて成約につなげるマーケティング手法」のこと。従来の営業マンが電話や訪問で売り込む「アウトバウンド」に対して、WebサイトやSNSなどで情報を発信して顧客を呼びよせるので「インバウンド」と呼ばれます。
「Hubspot」は2016年に日本法人を設立、本格的に日本市場に参入しました。一部ヘルプなどの解説は自動翻訳されたページとなっていますが、管理画面はほぼ日本語対応済みとなっています。2020年1月には、ユーザーが情報交換できる「Hubspotコミュニティ」の日本語版を開設しました。
「Hubspot」は顧客とのやり取りを自動化する機能もあるためMAツールと呼ばれることが多いのですが、実際にはCRMやSFAなど機能ごとにツールが分かれていて組み合わせて利用するスタイルになっています。まずはツールの種類を知っておきましょう。
Hubspot CRM(無料)
顧客データを統合管理するためのツール。顧客データは100万件まで登録できます。「Hubspot」ではこのCRMがベースになっていて、CRMに他のツールを組み合わせて使うスタイルとなっています。そのためCRMは全て機能を無料で利用できます。
Marketing Hub(一部機能のみ無料)
メール配信やフォームの設置、ブログやランディングページの構築などのWebマーケティング関連の施策を行うためのツール。
Sales Hub(一部機能のみ無料)
営業部門向けのSFA(営業支援)ツール。リード(見込み客)の行動履歴データを自動収集したり、どのリードを優先すべきか判断するためのスコアリングをしたりする機能があります。
Service Hub(一部機能のみ無料)
カスタマーサポート部門向けのツール。チャットやメールなどで顧客とやりとりできるほか、履歴データを一括管理できます。自動で顧客に対応するチャットボット機能もあり。
「Hubspot CRM」以外のツールは、一部機能のみ無料となっています。そのためMAとしてすべての機能が無料で使えるわけではありません。ただ一般的なMAツールはたいてい無料で使える期間が決まっていますが、「Hubspot」は無料期間の期限がありません。無料プランのままでよければ、ずっと使い続けることも可能というわけです。
Webマーケティング部門が「Hubspot」の無料版でできる3つのこと
「Hubspot」は無料版でもできることはいろいろありますが、Webマーケティング目線で気になる項目として、以下の3つに絞ってみました。
- メール配信・広告管理・効果測定
- フォーム作成
- リード(見込み客)管理
それぞれの項目で、具体的にどんなことがHubspot無料版でできるのか、紹介しましょう。
メール配信・広告管理・効果測定
「Hubspot」では2019年7月から、HTMLメール作成・一斉配信・分析機能が無料版にも搭載されるようになりました。
メールの作成については、HTMLを書く必要がないWYSIWYGタイプのエディタが搭載。テンプレートも用意されているので、デザイナーに依頼しなくてもレスポンシブなHTMLメールを作成することができます(インターフェイスはBenchmarkと似ている感じですね)。
名前やメールアドレスなど、送信先ごとに自動的に置き換わる項目も載せられます。気になる点と言えば、無料版ではメールのフッタに「Hubspot」ロゴが必ず表示されるところでしょうか。
メールの配信機能も、「Hubspot」に登録されているメールアドレスを対象にセグメントをして配信できますし、配信予約もできます。一般的なメール配信ツールとほぼ同じではないでしょうか。またメールのレポート機能もあり、開封率やクリック率などの数値を見ることができます。ただし無料版では月間配信可能件数が2,000件となっています。
メールと同じタイミングでアップデートされたのが広告管理機能。FacebookやInstagram広告の他、Google広告についてもインプレッションやクリック数を管理できるようになりました。こうした広告を出稿している場合、「Hubspot」上で一元管理できるのは便利ですよね。ただし無料版では、過去30日間の広告費が1,000米ドルまでというような条件があります。
フォーム作成機能
お問合せや資料請求といったフォームを作成する機能も、「Hubspot」の無料版にはあります。通常のフォームだけではなく、コンテンツページ内部にフォーム枠を設けるデザインも可能になっています。
ただし注意したいのが、無料版では「コンバージョンをGoogleアナリティクスで測定するためのタグを入れられない」という点。完了ページを「Hubspot」以外のページに指定することはできます。
反対に「Hubspot」で測定するためのタグを発行し、外部サイト挿入することはできます。「Hubspot」タグをWordPressで作った外部サイトなどに入れておけば、「Hubspot」上でユーザーの行動データを集めることができます。
「Hubspot」以外で作った外部のフォーム(例えばWordPressのプラグインなど)と「Hubspot」のデータを連携させるという設定もできます。外部フォームに入力されたデータを「Hubspot」のCRMに格納する設定をしておけば、「Hubspot」側でデータを一元管理できるようになります。
フォーム作成機能はそれなりにいいのですが、確認画面がないなど使いづらいと感じるも多いかもしれません。無料版を使う前提では、フォームは外部に設置して「Hubspot」のタグを入れるという方法が現実的かなと思います。
リード管理
「Hubspot CRM」はその名の通り、顧客管理を行うためのツールです。「Hubspot」ではリード(見込み客)のことを「コンタクト」と呼んでいますが、このリードに関する情報を一元管理できるのがメリット。
リードがいつメールを開封したか、Webサイトのページを見たか、どこをクリックしたか、といった行動データが自動的に「アクティビティ」として保存されます。営業担当やサポート担当が「Hubspot」上でリードとやりとりをすれば、そのデータも自動的に保存されます。リードごとにデータが時系列で見られるというのはわかりやすいですね。
基本的に「Hubspot CRM」の全機能は無料で利用できます。リードも100万件まで登録できるので十分足りるでしょう。ただし無料版ではアクティビティデータの保存期間が7日間となっている点は注意したいところです。
MAとして業務の自動化を実現するには、無料版ではやや厳しい
一般的なMAでは、ランディングページをリードごとに自動生成するなんて機能もよく知られています。でも「Hubspot」ではブログやランディングページの作成機能が、無料版にはないんですよね。この機能を利用する場合、月額40,000円以上と結構なコストがかかります。
またMAでは、自動でフォローメールを送るといったリード対応の自動化、リードの自動選定(スコアリング)も重要でしょう。ただ「Hubspot」の無料版ではこうした機能も残念ながら使えません。
つまりMAのメインである「業務の自動化」という観点で見ると、正直なところ「Hubspot」無料版では厳しいでしょう。ただしHTMLメールの作成・配信・効果分析あたりは使える機能だと思います。無料版ではメールを送れるのが月2,000通までとなっていますが、リード数が限られているBtoBマーケティングなら問題ないのではないでしょうか。
本格的なMAを使うというよりは、Webマーケティング担当がメール配信ツールとして使ったり、問合せのあったリードの管理をしたりという用途なら「Hubspot」無料版の導入はアリだと思います。特に行動データを把握できる機能については、リードごとに詳しい行動を追えるようになっていて、Googleアナリティクスより使いやすいと感じます。
※本記事で掲載している機能などは、2020年1月時点のものです。