コンテンツマーケティングの費用対効果の考え方
コンテンツマーケティングの費用対効果を考える上では、まずは前提条件である目的を考える必要があります。何のためにコンテンツマーケティングをそもそも行うのか。「ブランド認知を高めたいのか」、「顧客を獲得したいのか」、「顧客を育成したいのか」、目的が違えばそれぞれのコンテンツにも差違が出てきます。その上で、成果を測る指標を設定して、費用対効果を見ていくのが正しいコンテンツマーケティングの運用スタイルです。
費用対効果を「考える時」は効果が注目されがちですが、「実際のオペレーション」では費用の方が注目されがちです。なるべくコストを最小限にして、最大限の効果を得たい。この発想自体は運営方針として間違いではありませんが、コンテンツマーケティングを行うには相応の費用がかかります。これらの金額や実際の事例を通して、コンテンツマーケティングの費用対効果をより深く理解していただければと思います。
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コンテンツマーケティングの前提条件
前提条件を確認する理由
前提条件を考えずに、コンテンツマーケティングの費用対効果を考えると、結果を踏まえた正しい判断ができません。例えばですが、毎月30万円の費用をかけて、10万PVのサイトを運営している企業がいるとします。これを15万PVや30万PVと増やすために、現場では日々改善を重ねていますが、このPVをより増やすためにアクションを取っている彼らは正しいと言えるでしょうか。
結論、アクセスの向上が目的で運営しているなら正しく、顧客獲得(問合せ)などが目的の運営なら最適ではないかもしれません。コンテンツマーケティングを実施した背景には、何かしら企業の戦略的な意図があるはずです。事業部単位なのか、企業単位なのかは組織の規模・状況によって異なってくると思いますが、その戦略的な意図を踏まえた上で、効率性や有効性を判断することが大切です。なおコンテンツマーケティングでできることなど、基本的な内容については「今更聞けないコンテンツマーケティングの基本」で詳しく解説しています。
コンテンツマーケティングの目的は何か
もっと簡単に言えば「コンテンツマーケティングを実施している理由は何か」ということ。実施している目的が最初にあり、その目的を実現するために実施したアクションの結果を数量的に測り、その結果を得るために使ったお金を費用として考えることで、はじめて費用対効果が見えてきます。それでは、一般的に企業はどんな目的でコンテンツマーケティングを実施するのでしょうか。
株式会社エコンテの調査結果によると、「ブランド認知」、「顧客獲得」、「顧客育成」がコンテンツマーケティングを行う目的の上位にきています。当然ながら、それぞれの目的に応じて、達成度合いを測る指標は異なります。この評価指標については、「今日から使える17つのコンテンツマーケティング評価指標」をご参照下さい。
コンテンツマーケティングの費用
コンテンツマーケティングの月額費用
まずは、ディーエムソリューションズさんが2015年10月に企業担当者200名に行った下記のアンケート結果をご覧下さい。
「外注しているコンテンツマーケティングの月額費用」(出典:ディーエムソリューションズ株式会社)
コンテンツマーケティングの月額費用では、「0円(すべて自社リソースで実施)」が40.0%で最も多く、残る6割は何らかの業務を外部に依頼していました。その6割の内、約半数の32.0%は「30万円未満」で、30万円以上をかけている企業は全体の3割に満たないという調査結果です。
内製化した際の平均コスト
上記でコンテンツマーケティングの月額費用は「0円(すべて自社リソースで実施)」と回答した企業であっても、当たり前ながら内製している分の人件費はかかっています。こちらの調査はあくまで外部に依頼した際の費用で、自社リソースで全てを実施してもコンテンツマーケティングには必ず何かしらの費用がかかります。具体的には下記のような費用が一般的には必要です。
サイト制作費
サイト制作費については毎月かかる固定の費用ではなく、一度支払うだけのイニシャルコストとなります。制作技術の知識が無くても記事を投稿できるようにするため、基本的にはWordPress等のCMSでサイトを構築される企業の方が多いと思います。例えばですが、WordPressでのサイト制作を外部に依頼した場合、デザイン、コーディング、WordPressへの組み込みを全て合計して、安価な企業だと50万円前後から依頼できる制作会社はあります。社内で対応する前提であれば、その半額程度のコスト(厳密には人件費)で対応できるかと思います。
ディレクション費(企画・マーケティング・編集校閲)
中小企業の場合、これらの作業については一人の担当者を置いて任せているケースが大半です。つまり、コストという観点で言えば1人分の人件費です。ただ、それも兼務で任せている場合と、専任で任せている場合は当たり前ながらコストが異なります。企画・マーケティングと編集校閲では求められるスキルが違うので、本来であれば別々の担当を配置した方が良く、大手企業であれば人材を別に割くことが多いと言えます。このコストは効果が測りづらいのでコスト削減される傾向にありますが、コンテンツマーケティングにどれだけ力を入れて運営するかを測る分かりやすい目安であり、きちんと成果を追い求めるのであれば相応の人材リソースを割くべきところです。
ライティング費
専門知識が必要な記事を前提とすると、単純に作業としてライティングを行うなら1記事あたりにかかるライティング時間は1,000文字程度で1時間程です。逆にクオリティを追い求める場合、1記事あたりにかかるライティング時間は4時間〜5時間程度かかることもあります。これを社内で行う場合、どこまでクオリティを追い求めるかを決めて、ライターさんの時給に平均時間を掛ければコストが算出できます。
分析費
コンテンツを各種メディアに投稿した後、それらをGoogle Analyticsなどのツールを使って分析し、次月以降のコンテンツ運営方針に反映させる意味合いを抽出する担当者をイメージして下さい。こちらの人件費も上述のディレクション費の中に組み込み、一人の担当者で企画から分析まで全て一人で行っている担当者も少なくありません。コンテンツマーケティングは重要だと頭では理解しつつ、実際に人員配置をする際には「あれもこれもできるでしょ」とコスト削減ばかりに気を取られてしまうことが多く、しっかりとした体制をもった企業の事例は極めて少ないのが現状です。これがGoogleなどで成功事例を調べてみても、成功した事例が無い隠れた理由の一つかもしれません。
コンテンツマーケティングの効果
コンテンツマーケティング実施による成果
「コンテンツマーケティング実施による成果の有無」(出典:ディーエムソリューションズ株式会社)
上記のアンケート結果にある通り、成果が出ていると回答した企業は45.5%にすぎません。過半以上の企業はコンテンツマーケティングの効果を感じていないが、一方で、「月額30万円以上のコストをかけている企業」に絞ってみると、約7割が「成果が出ている」と回答していることが分かります。
コンテンツマーケティングの成果を感じたポイント
「コンテンツマーケティングで効果を感じたポイント」(出典:ディーエムソリューションズ株式会社)
コンテンツマーケティングを行った結果、「問い合わせ率が向上した」の40.5%が全体で1位となりました。以下「社内理解の向上」「検索順位の上昇」「PV数のアップ」「新規流入数の増加」が続いております。ここでもコンテンツマーケティングを行うにあたり、月額30万円以上の費用をかけた企業が、よりコンテンツマーケティングの効果を実感していました。
費用と効果は比例する
コストのところでも説明しましたが、費用を削減したコンテンツマーケティングで成功を収めるのは非常に難しいです。費用と書くとネガティブな印象がありますので、投資と置き換えた方が良いかもしれません。取材・ライティングや編集、記事内に挿入する素材やインフォグラフィックの作成など、良いコンテンツにはやはり多くの費用がかかります。だからこそ、より多くの(厳密には適切な)投資を行ったコンテンツマーケティングの方が、より多くの効果を手に入れることができるのです。もちろん、管理をせずに野放図にお金を投資すれば良いというものではないので、「今日から使える17つのコンテンツマーケティング評価指標」などを参考にしながら、費用対効果を注視していただければと思います。
コンテンツ量と効果も比例する
コンテンツマーケティングの効果に比例するのは費用だけではありません。作ったコンテンツは資産化されるので、公開後は継続してアクセスを集め続けます。そのため、同じ費用でコンテンツを作り続けるだけでも、コンテンツ量の増加に応じて得られる効果も大きくなっていきます。
コンテンツマーケティングの、この『継続することで費用対効果が向上し続ける』というポイントが、出稿企業の増加に伴うクリック単価上昇に苦しむリスティング広告と差別化できる大きなポイントと言えます。
費用対効果の高い事例:「GameWith」
上述の「より多くの(厳密には適切な)投資を行ったコンテンツマーケティングの方が、より多くの効果を手に入れることができる」という事例で是非ご紹介したいのは、2016年2月時点で、月間7億PVを誇るゲームアプリの総合情報メディア「GameWith」です。2013年9月にメディアを立ち上げてから、現在は14個のゲームタイトルの攻略情報コンテンツの運用と新作ゲームアプリの紹介コンテンツを提供されています。
コンテンツマーケティングに取り組んだ経緯
「GameWith」は当初ゲームのQ&Aサイトとしてリリースされました。しかし、Yahoo!知恵袋のようなQ&Aサイトでは、ユーザーを満足させるコンテンツを提供し続けることは難しいと判断し、自社でコンテンツを提供する体制に変更しました。
コンテンツを全て社内で作成することで、クオリティコントロールを細かくできるようになり、ゲームタイトルの攻略情報コンテンツや新作ゲームアプリの紹介コンテンツなどがユーザーに評価されたことで、サービスが一気に大きく成長したとのことです。コンテンツのクオリティを高める施策について、自社で提供した攻略コンテンツに対して、より良い攻略方法がないかをゲーム好きのユーザーにチェックしてもらうという対策なども取っています。常にユーザーを意識してコンテンツを改善していくことで、より高いコンテンツ満足度を得ているのです。
ゲーム好きを集めることで、費用対の高い文章クオリティを実現
ディレクターが正しく企画とコンテンツSEOをマネジメントできているという前提であれば、コンテンツのクオリティはライターの文章クオリティに依存します。そして、実際にライティングを行うと分かるのですが、自分の得意分野や好きな分野で書く文章は、読み手を惹きつけます。「金額にあった記事(情報量)しか書きたくない」というライターには書けない世界で書くことができるからです。
それが分かっているからこそ、GameWithでは、ゲームが好きで、ゲームに詳しい人だけを厳選して採用しています。クラウドワークス等のクラウドソーシングでライターを探す方法もありますが、GameWithでは自社Webサイト上でライターを募集しているそうです。理由はイメージしやすいと思いますが、GameWithのコンテンツが好きで毎日来ているユーザーに対して、「あなたもライティングしてみませんか?」と声をかける方が効率的で、長期的な費用対効果も高まるからです。
まとめ
より効果的なコンテンツマーケティングを行うには、それに応じた費用(投資)が必要になります。特に、「GameWith」のような月間7億PVという素晴らしい成果を得るためには、コンテンツへのこだわり、採用へのこだわりを強く持ち、コンテンツマーケティングに妥協せずに日々のオペレーションを行うことが大切です。紹介してきたように、コンテンツマーケティングによって蓄積されたコンテンツは広告などと違い、継続的にアクセスを集める自社の資産となるため、中長期的な取り組みとして考えていきましょう。また、費用対効果の具体的な数値計算については「マーケティングでROI分析を行う時の基本と注意点」で詳しくご紹介しているので、合わせてご覧ください。