ヒートマップで得られる情報と運用のコツ

ヒートマップで得られる情報と運用のコツ

ヒートマップはユーザーの動きをビジュアルで把握できるので、Google Analyticsよりも簡単にユーザーの情報を得ることができます。得られる情報も一般的に知られているサーモグラフィーのような図以外に、読了率や、ユーザーのマウスの動きを記録して1つ1つ見るなど様々な機能があります。まずはヒートマップで得られる情報をご紹介しながら、ヒートマップの導入メリットと注意点を読むことで、運用のコツを掴んでもらえればと思います。

ヒートマップで得られる情報

ヒートマップで得られる情報

ヒートマップとは

ヒートマップとはGoogle Analyticsで得られるような数字のデータの強弱を、色で可視化することができるツールです。ユーザーのマウスの動きを追跡し、それをデータとして蓄積することでヒートマップを作り出しています。Google Analyticsでもイベントトラッキングを設定することでデータを取りたい箇所のクリック率を追えますが、逆に言えば、クリックをされていない場所についてはGoogle Analyticsでは分かりません。クリックの有無に関わらず、ユーザーのページ内の各要素における関心度を簡単に知ることができるヒートマップは、ユーザビリティを改善していく上で非常に有用なツールの1つです。

ヒートマップで得られる情報1「どこがクリックされているか」

最も一般的な情報は下図のようなマップで、皆さんもどこかで一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。

参照元:株式会社ユーザーローカル「User Heat

上記図のように、最もクリックされている箇所は濃い赤色で一目で分かるようになっています。クリックされている箇所であれば、Google Analyticsでも確認することができます。それを可視化して一目で分かるのがヒートマップの特徴の1つです。

ヒートマップで得られる情報2「どこが見られているか」

訪問者のマウスの動きや滞在時間をもとに、特定のページがどのように見られているかを可視化して知ることができます。ページの滞在時間であればGoogle Analyticsからも把握できますが、「どこがよく見られているか」「どこが全く見られていないか」といったようなユーザーの視点を把握することはGoogle Analyticsにはできません。多くのヒートマップではページ内を複数の暖色と寒色に分けて表示することで、それらの情報が一目で分かります。この機能を応用して、ユーザーがページの閲覧箇所からどこまで見たか(読了率)を同じく可視化して把握することもできます。ユーザーがどこまでスクロールしたかが分かれば、コンテンツの良し悪しを判断する1つの材料になります。また、コンテンツを改善した際にも、その効果があったのか(無かったのか)を判断しやすくなります。

ヒートマップで得られる情報3「どうやって見られているか」

個々のユーザーのマウスの動きを記録して再生する機能により、ユーザーがページ内でどういった動きをしているかを把握することもできます。通常はユーザーに対して直接アンケートを行わない限りは、ユーザー心理を知る方法は推測する以外にありません。ところが、ユーザーアンケートは時間とお金がかかるので、その代替手段の1つとして、ユーザーの実際のマウスの動きを見れるこのヒートマップの機能はとても参考になります。「どこまで見られているか」に加えて、「どう見られているか」を理解することは、WEBサイトのユーザビリティ改善には欠かせない情報だと言えます。

なぜヒートマップが必要なのか

なぜヒートマップが必要なのか

可視化により理解度が早まる

アクセス解析の数値のままですと、結果を理解し改善策を出すまでにGoogle Analytics上での工夫が必要です。ところが、ヒートマップであれば改善箇所が一目で分かります。前出した図のように、最もクリックされている箇所とそうでない箇所は色によって区別されるためです。また、どこまでスクロールされたかについても色の強弱で分かるので同様です。ただし、仮説を持ってヒートマップを活用しないと、クリックされている(されていない)箇所が何となく分かった、で終わってしまいます。よって、ヒートマップを活用する際は、まずはGoogle Analyticsで改善ページを特定する。その上で、そのページ内の改善点を仮説と根拠をセットで考える。その仮説が正しいかをヒートマップやA/Bテストツールで検証するという流れを取ることをお勧めします。

A/Bテストを活用しやすくなる

単なるA/Bテストでは、結果をもとにした考察が人によって異なることがあります。ところが、ヒートマップはビジュアルで共有されるので、共通認識が持ちやすいと言えます。例えば、「あるコンテンツ文章をページ上部に追加することで、ページの読了率が高まるはず」というA/Bテストに対して、実際どこまでページが読まれるようになったかをヒートマップで可視化して共有することで、A/Bテストの結果を限りなく同じ認識で解釈できるようになります。

ユーザーとの認識ギャップが分かる

「本当は見てほしいのに、実際はユーザーに見てもらえていなかった」などといった結果が分かりやすくなります。Google Analyticsではクリック箇所は追えても、ページ内の閲覧箇所までは把握することはできません。ヒートマップを利用することで、そういったページの閲覧箇所を視覚的に把握することができます。また、ヒートマップを有効活用するために大切なのは、必ずコンバージョンと結び付けて考えることです。「本当は見てほしいのに、実際はユーザーに見てもらえていなかった」という箇所においても、それらがコンバージョンへの影響が高いから考慮する必要があるわけで、影響度が少ない箇所をヒートマップを見ながら悩んでいても時間の無駄になってしまいます。

サイトの設計ミスを発見できる

ヒートマップは、サイトの設計者が予想していないユーザーのアクションについても可視化して把握することができます。例えばですが、予想外の部分にクリックが集中しているものの、その場所はそもそもクリックしても何もアクションが起きない設定になっている場合などです。その場合は、該当箇所にリンクを挿入することで改善ができます。ユーザーの動きは時にサイト設計者の意図を大きく越えることが多々あります。そのような際に、ヒートマップの利用がユーザー心理の理解に役立ちます。

ユーザーひとり一人の動きを追える

マウストラッキングは、ユーザーがサイト内に訪問した後の動き(マウスの動き)を全て取得し、再生できる面白い機能です。一部の大手企業のように予算が潤沢にあれば、ユーザーひとり一人に対してユーザーテストを行うことで、実際のユーザーの心理を把握することができますが、全ての企業がそのような潤沢な予算を持っているわけではありません。そのような場合、このマウストラッキングの機能を使うことで、ユーザーのマウスの動きから心理状態を推測しやすくなります。

ヒートマップの課題

ヒートマップの課題

サイトに存在しないページの課題は分からない

当たり前ながらサイトにページが無ければデータを蓄積することもできないので、ユーザーが心理的に「あって欲しいページが無い」故に不便だと感じている点については分かりません。これはヒートマップに限らず、Google Analyticsに対しても言えることではあります。Google Analyticsもヒートマップもユーザーの行動データを把握するためのツールだと理解しておいて下さい。現在サイトに存在しないページも含めて、そもそも論でユーザーの心理的な不満を拾い上げるためには、ユーザーテストなどを通してユーザーの声を直接聞く必要があります。

要素の良し悪しは分からない

ヒートマップツールで「ある要素が見られている(見られていない)」ことが分かっても、「なぜこの要素が見られているか」といったユーザー心理については同じく分かりません。これは前述したように、ヒートマップが行動データを把握するためのツールであるからです。よって、ヒートマップを通して分かったユーザーの心理については、更に掘り下げて調査を進めていく必要があります。その調査費と時間を省きたい場合は、推測によって原因や解決策を立案し、A/Bテストを実施して改善していくという方法もあります。この場合は、A/Bテストの結果が良ければページをその通り改善し、結果が悪ければ更なるA/Bテストを実施していく形です。

おわりに

ヒートマップはユーザーの動きをビジュアルで簡単に把握できるツールとして、利用している企業は少なくありません。タグを設置するだけで自動的にサイトの情報を周遊して可視化してくれるので、導入のハードルも低いと言えます。有料から無料のツールまで数多くのツール提供企業が存在しているので、まずは無料のツールから使ってみることでヒートマップの有用性を感じてみるのはいかがでしょうか。